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第24回 加藤秀司 「信頼できる指導者との出会い、そして努力」

―ノンプロの名門・松下電器で長打力のある4番バッターとして活躍した加藤氏は、昭和43年のドラフト会議で阪急ブレーブスから2位指名を受け、入団する。


あのときは1位指名がピッチャーの山田久志、2位が僕、そして7位が、松下電器でチームメイトだった福本豊という陣容だったですね。3人ともそろって名球会のメンバーになったわけですから、阪急としてはドラフト大成功の年だったと思うんですが、その3人のなかで僕がいちばん1軍に上がったのが遅かったんです。
福本には足があったし、守備もうまかった。だから守備と代走の要員としてすぐに1軍に上がったし、山田はサイドスローからの豪速球を武器にして入団2年目には10勝投手になった。ところが、僕の場合は1塁手の要員だったから、やっぱりプロの球がしっかり打てると、そう認めてくれるまでは1軍には上がれなかったですね。だから1年目は、1軍の試合に出たのは9試合ぐらい。後はファームでひたすら練習、練習の毎日だったですね。
とにかくプロのスピードとパワー、それを生み出している基礎体力がノンプロとは全然違う。入団して自主トレ、そして春のキャンプに参加するんですが、そのキャンプ初日でもうピッチャーの投げる球の速さ、打者のバットスイングの速さが全然違うんです。ああ、こりゃダメだと、あわてて1軍に上がっても勝負にならない。それよりもこのスピードについていけるだけの基礎体力、パワーをつけなくちゃ勝負にならないと思いましたよ。


―入団2年目の夏場過ぎ、加藤氏はその後のプロ人生を左右する勝負のときを迎える。


45年のシーズンは、夏場過ぎからファースト・3番バッターとして1軍に上げてもらったんですが、これは要するにテストなんです。チームは4位で、もう優勝は望めない。だから2軍にいる選手を1軍に上げて、来期、主力として使えるかどうかをどんどん試しはじめたんです。僕は35試合に出してもらって、打率3割3分の成績を残してシーズンを終了したんですが、それからですね、西本(幸雄)監督のマンツーマンの特訓がはじまったのは。
シーズン終了後の秋の地元での練習で、もう西本さんが付きっ切りでバッティング練習させられたんです。毎日毎日、人の2倍、3倍というバッティングをやらされる。しかも西本さんが側にいて、ひと振りひと振りチェックしながら、気に入らないとなると「もうプロなんか辞めちまえッ」とか、どんどん怒鳴りはじめる。それでも振りが直らないとなると、今度は手が出る、足が出る、最後はバットまで出てくるという感じだったですね。
西本さんは兵隊帰りですからね、スパルタで、本当に鬼みたいに恐い監督だった。でも、ここで匙を投げられたら終わりだなということはわかっていたから、もうこっちも必死でついていったし、辛いなんて正直、全然思わなかった。それよりも加藤は駄目だ、使い物にならないと思われて、見放されるほうが恐かったですね。


―西本監督の鬼の特訓に耐えた加藤氏は、翌46年のシーズンからファースト・3番の定位置を確保し、それ以降、チャンスに強い長距離バッターとしてブレーブス黄金時代の一翼を担う選手に育っていく。


46年のシーズンは、キャンプからオープン戦の期間がいちばん辛かったですね。キャンプでは西本監督の特訓がつづいて、オープン戦では3番バッターに起用された。オープン戦が終盤を迎えるころになると、そのシーズンのベンチ入りのメンバーが固まってくるんです。40人ぐらいの候補者のなかから10人削られ、5人削られ、最終的に25人ぐらいに絞られる。ところが、その大事な時期になって、やっぱり意識しはじめたのか、好調だったバッティングが全然ダメになっちゃたんです。
自分でもどこが悪いのか全然わからない。とにかく打てないんですよ。4打数ゼロ安打、次の試合も、その次の試合も全然ヒットが出ない。で、なんで打てないバッターを3番に起用するんだって、ファンや新聞が騒ぎはじめたんです。ところが、西本監督はまったく動じないで、黙って僕を3番で起用しつづけた。そのときですね、プロの恐さ、結果をださなきゃダメなんだということが本当に身に沁みてわかったんです。
そんなふうに苦しんでいたときにポンッとホームランが出て、その次の打席でもホームランが打てた。それ以来ですね、ずっと調子がよくて、シーズンの最後の最後までロッテの江藤慎一さんと首位打者を争ったんですよ。


財団法人 産業雇用安定センター刊「かけはし」
2001年12月号より抜粋

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