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名球会コラム しごとの風景 - 職業としての野球

第16回 山崎裕之 「自分を律する力こそがプロで長生きできる秘訣」

―昭和39年のストーブリーグの焦点は、埼玉県・上尾高3年の山崎裕之選手に集まった。マスコミが「長嶋2世」と騒いだ逸材の獲得をめぐって、プロ10球団が熾烈な競争を繰り広げたのである。


本格的に野球をはじめたのは中学に入ってからですね。1年生からレギュラー入りして、2年生からはピッチャーで4番を打っていました。もうその頃から、将来はプロ野球の選手になりたいと思っていました。
高校は地元の上尾高校に進んだのですが、当時は、とくに野球が強いという学校じゃなかった。だから入学してすぐにショートとピッチャーでレギュラー入りして、そのまま春の関東大会に出場したんです。この春の大会は大宮公園のなかにある大宮球場で開催されたんですが、そこで僕はたまたまバックスクリーンに大きなホームランを打ったんです。
なにしろ広い球場で、バックスクリーンにホームランを打ち込んだのは、高校生ではたしか僕が2人目だったんです。1人目があの長嶋茂雄さんで、佐倉一高時代に大宮球場で試合をしてバックスクリーンに特大のホームランを打ち込んだ。当時、長嶋さんは読売ジャイアンツの4番バッターで、すでにプロ球界の大スターになっていましたが、その長嶋さん以来の快挙を高校生、それも中学から上がったばかりの1年生がやったというので、スポーツ新聞が一斉に「長嶋2世」と、僕のことを大きく報道してくれたんです。
それをきっかけにプロのスカウトの方が練習を見に来るようになりました。そして、その年の秋の関東大会で、またまた大当たりをしたんですね。たしか3試合で12打数8安打、ホームラン2本という成績だったんですが、それ以来、各球団のスカウトの方が入れ替わり立ち替わりといった感じで学校や家を訪ねてくるようになりました。


―熱烈なジャイアンツのファンだった山崎氏だが、入団先として選んだのは人気の薄いパ・リーグの東京(現・ロッテ)オリオンズだった。そこには「仕事としての野球」にかける山崎氏なりの考えがあった。


最終的に10球団からお誘いがあったんですが、僕自身が決断してオリオンズ入りを決めました。たしかに契約金も高かったんですが、それだけの理由でオリオンズ入りを決めたわけじゃなかった。まず一番早く練習を見に来てくれたのがオリオンズのスカウトの方だったことですね。
1年生の春から3年生の秋までずっと学校に通って、僕のことを見つづけてくれた。この恩義に応えたいという気持ちが一つ。それからもう一つはレギュラー入りの可能性が高かったこと。どのチームだったらいち早くレギュラーの座を確保できるか、そういうことも考えて最終的にオリオンズに入ることを決めたんです。
子どものころからジャイアンツが好きだったし、趣味で野球をやるならジャイアンツでもよかった。でも、仕事で野球をやるなら、やっぱり一軍の試合に出ること、一年でも長くプロの世界で働くことが一番大事だと思ったんです。


―入団1年目から1軍登録された山崎氏は、3年目にセカンドのレギュラーポジションを確保。以来、その長打力と鉄壁の守備力を武器にオリオンズ、そして54年のシーズンからは西武ライオンズの中軸選手として活躍をつづけていく。


2000本安打を打ったのはプロ野球の世界に入って19年目のシーズン、58年9月のことだったですね。ひとくちに2000本安打っていいますが、これはやっぱり長年にわたってレギュラーでゲームに出ていないと、とても達成できる数字ではないんですね。
プロ野球というのは新陳代謝の激しい世界で、毎年毎年、力のある新人がどんどん入ってくる。そうしたなかで15年、20年とレギュラーの座を守りつづけることは本当に難しいことなんです。どんなに力があってもケガや故障をしたらおしまいだし、自分よりも力のある選手が入ってきたら即交代という世界ですから、結局、生き残っていくためには自分で自分自身を鍛えていくしか方法はない。
仕事としてプロ野球を選んだ以上は、やっぱり長く働きつづけなくちゃいけない。それには身体能力や運も必要ですが、最後はやっぱり自己管理能力なんです。睡眠から食事、トレーニング、身体の手入れまで、きっちりと自分で管理して常にベストコンディションを維持していかなくちゃいけない。こうした自分を律する力がないと、やはりプロの世界で長くレギュラーの座を確保するというのは難しいですね。


財団法人 産業雇用安定センター刊「かけはし」
2001年4月号より抜粋

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